二つの虹

tamisan

2011年09月10日 17:19


 浦添の経塚(きょうづか)に、その地名の由来となった小さな丘があります。
 琉球松に囲まれたその丘は、最近架け直された経塚(ちょうちか)橋のすぐ上にあり、
 そこに金剛嶺(こんごうれい)と刻まれた古い石塚が建っています。

 昔、このあたりは昼なおうす暗い森だったそうです。
 そこには怖ろしい妖怪が住みついていて、人々を悩ませておりました。
 そこで神通力を持ったお坊さんがその妖怪を退治して、
 お経を書いた石を埋め、その上に金剛嶺の石を据えたのです。
 こうして妖怪たちは鎮まり、めでたしめでたしとなったわけです。

 これが経塚の由来ですが、ひと気のないその丘に一人で立っていると、
 なんだかゾクッとしてくるのは、気のせいでしょうか?


 夏のある朝、経塚橋の上を歩いていた時のことです。
 経塚の丘の上に、なんと、大きな虹が二つも架かっているいるではありませんか!
 ふだんよく見る虹はだいたい一つですが、その上にもう一つ虹が乗っかっているのです!

 調べたところによると、これは副虹(ふくこう)というものだそうです。
 私たちがよく目にしているのが主虹(しゅこう)で、
 主虹は水滴が1回反射してできて、副虹は2回反射してできるのだそうです。
 (そう言われてもいみくじピーマンですが・・・)

 副虹は、たまに見えることがあってもうすぼんやりしているし、
 部分的にしか見えないことが多いのですが、
 このときの虹はハッキリクッキリ、
 主虹に負けないくらいきれいに見えていたのには驚きました。

 けれど、何だか何かがおかしいのです。
 よく見ると、副虹の色の並び方が違うのです。
 私たちがよく見る虹は,下から紫、藍、青、緑、黄,橙、赤と並んでいますが、
 副虹はそれが真逆で、上から紫、藍、青、緑、黄、橙、赤になっているのです。

 二重の虹に、反転する色・・・・。本当に虹って不思議ですね。

 今思い出しても経塚橋の上から眺めたこの日の虹は、本当にパーフェクトな虹でした。
 二本の虹が、少しの欠けもかすれもない姿で、
 緑の丘の真っ青な空に色鮮やかに描かれていたのですから。


 P・S  由来話をもうひとつ。
 地震や雷のとき、沖縄の人は「チョーチカ、チョーチカ」とおまじないを唱えるのですが、
 その言葉もこの経塚から来ているようです。
 怖ろしい妖怪を封じ込めた、強力なマジカルパワーにあやかってのことなのでしょうね。

 今朝、、久しぶりに塚を訪ねてみました。
 塚のそばの説明書きを読んでみると、500年前の出来事だったのですね。
 お坊さんの名前までちゃんと詳しく書かれてありました。
 金剛嶺と刻まれた石は、あちらこちら欠けてみるからに古さびておりました。
 もしかしたら塚が建てられた時からの石なのでは・・・・と考えると、
 何だか妖怪退治のお話が、とても身近にリアルに迫ってきました。

 どうかあの美しい虹が、塚に封じ込められた妖怪たちの心を、
 少しでも慰めてくれますように・・・・。ア~、チョーチカ、チョーチカ。


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