夢のスープ    アタゴオルより その②

tamisan

2011年10月20日 17:01


 「アタゴオル物語」には、もう一つ虹のでてくる『唐あげ床屋』というお話があります。


 ある日、雨降り森に開店したばかりの唐あげ床屋へ、
 テンプラとヒデヨシは葉っぱの傘をさして出かけます。

 そこでは、客が夢のスープを飲んで眠っている間に、、
 店主の唐あげ丸氏(もちろん猫)の奏でるバイオリンに操られたカニたちが、
 お客の髪をカットしてくれるのです。

 唐あげ丸氏は天才的な芸術家にありがちなタイプで、
 演奏に夢中になってつい我を忘れてしまい、ヒデヨシの頭をスキンヘッドにしてしまいます。

 恐縮する唐あげ丸氏に、どうなることかと見守るテンプラ・・・・。
 夢から覚めたヒデヨシは、鏡を見るなり、
 「う。かっこいい!!」とのたまうのです。

 帰り際、唐あげ丸氏は夢のスープのうすめ液を、二人のハーモニカに塗ってくれます。
 ハーモニカを吹きながら帰り道を歩いていると、突然ヒデヨシとテンプラの背中から、
 ワッと高い虹が立ち上がるラストシーン・・・・。

 巨大な植物や鉱物に囲まれた、力ではたどりつけない
 マジカル・ファンタジー・ワールド 『アタゴオル』・・・・。
 本当に何度読んでも飽きることがありません。

 

 ところで、以前読んだことのある大好きな推理小説を、最近読み直した時のこと。
 読み終えるまで、その内容を全く思い出すことができず、ガク然としたことがあります。
 ほんと、年は取りたくないですよね。

 ですが、もし年を取ってボケてしまったら、 きっと初めて読むときのように、
 何度でもワクワクしながらヒデヨシの物語を読むことができる、
 と思い至った時、何だか今からボケるのが楽しみになってきました。


 その日に備えて、もし私がボケたら、これとこれとこの本を読ませておくように、
 そしたら私はいつもハッピィーでおとなしくしているだろうから、
 と常日頃から息子に言い含めております。(ほとんどがコミックです)

 そうしていつか私ベティちゃんは、夢のスープを飲んだように、
 ワクワク、うっとりと老後の日々を過ごすのです。


★「アタゴオル物語 1」  ますむらひろし  朝日ソノラマ

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