2011年09月30日
骨を折って見た虹
以前、旅先で一月ばかり入院したときのこと・・・・。
3階にある私のベッドの横の大きな窓からは、
美しい山並みと、すそ野に広がるサトウキビ畑を見渡すことができました。
肋骨が3本折れていたので、ただただ身動きせず、
安静にしているしかない日々が続いていました。
とはいっても、家事や仕事から解放され、
上げ膳据え膳、こんな気楽なことはありません。
しかもその病院、医者はヤブでしたが食事はとてもおいしかったのです。
閑話休題。
その医者がどのようにヤブかというと、少し話はそれますが、まぁ聞いて下さい。
どこの骨が折れているのかという私の質問に対し、
胸部のレントゲンを見ながらこのへんだと指をさすので、
体の前か後ろかときくと、痛いところがそうだと答える。
どこもかも痛くてわからないと言うと、押してみて痛いところがそうだと言う。
とても自分でそんなことできないとい言うと、
ヤブめは私の左胸の下を指で突いた。
思わず痛い!と声を上げると、ここだと言う。
なんでどこが折れたか知りたがるのだと医者が訊くので、
そんなこと当たり前でしょ、アホかお前は、と言いたいところをグッとこらえ、
そこに意識を集中して早く直るようにするのだと答えると、
鼻で笑って馬鹿にした。
腰痛ベルトを巻きつけるだけの手当てしかしないので、
もう少し何かしてくれないかと言ったら、大きな湿布薬をくれた。
私はそれを律儀に毎日貼り替えた。
そうして退院間際になった頃、実際に折れていたのは背中の側だったと判明。

レントゲンを見てどこが折れているかもわからないなんて、
それでも外科医か!恥を知れ、恥を!

・・・かくて、私の医者不信採点表に更に得点が追加された。

(あーあ、医者の悪口となるとついつい頭にカッカきて、我を忘れてしまいます。
すいません、話をもとに戻します。)
トイレに行く時はちょっと大変でしたが、それでもまぁ~私は毎日幸せでした。
なんといっても、瑣末な日常の心配りをすべて忘却し、
三食昼寝付きで、美しい自然のパノラマを飽かず楽しむ日々だったのです。
そんなある日、山の斜面や、すそに広がる畑のあちこちに、
平屋の高さほどの小さな虹が、かわいいアーチを描いて
いくつもいくつも湧き上がっているのを見たのです。
絵に描いてお見せできないのが残念なくらい、
それはそれはマジカルでメルヘンな風景でした。
虹は空に架かっているのではなく、地面から噴き出しているように見えました。
思い返してみると、そこは夕暮れの山の陰になっていて
陽はあたっていないのですから、畑の散水でできた虹ではありません。
それに普通、あんなに小さな虹が、10コくらいいっぺんに
あちらこちらに出現するなんて、ちょっとあり得ないことでしょう?
それでは、あの時見た虹はいったい何だったのでしょう・・・・。
もしかして私が見たものは、
ヒッピーやドラッグカルチャーの申し子達が表象とするあの虹、
アマゾンのシャーマンがトランス状態で見る類の、虹だったのではないでしょうか?
あの頃の、入院生活という俗世から隔絶された特殊な状況が、
私の意識を一種の変性状態に導いていたのではないかという気がするのです。
けれど私はあの時、特に驚くでもなく、何の疑念も抱くことなく、
もっと見ていたいというこだわりもなく、ふーんといった感じで
見えることを当たり前のように素直に受け入れていたのが、今思い返すと不思議です。
もっととっくりと見ておけば良かったと後になって思ったのですが、
たぶん、そういう雑念があると見えない虹だったのかもしれませんね・・・。
それにしても不思議な虹を見たものです。
それこそ骨を折ってみた甲斐があったというものです。
Posted by tamisan at 20:28│Comments(0)
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