2011年11月23日

空の上のブロッケン現象


 ひと頃、仕事で毎月那覇と石垣を往復していました。
 私の空の旅の楽しみは、雲ウォッチングです。
 地上から見る雲とはまた違った姿かたちがあって、
 毎回窓際に張り付いて、わくわくしながら眺めていたものです。

 行きはいつも朝1便で、八重山の島影が見える右側の、
 
 翼にかからない席を取るようにしていました。

 ある日、窓から右斜め下に、雲をスクリーンにして薄い虹の環ができていて、
 真ん中に飛行機の形をしたものが見えました。
 それは、そのままの形で飛行機の横をずっとついて来ます。
 いったいあれは何なのだろう、と首をひねったものです。

 何回か見ているうちに、真ん中の飛行機の形をしたものは、
 朝の光に照らされた機体の影だと気が付きました。
 それにしても、周りの虹の輪っかはどういう現象なのか、ずっと謎でした。


 ところで、ブロッケン現象という言葉を聞いたことはありませんか?
 山で遭難した人が、命の瀬戸際でキリストを見た、
 とかいうエピソードと共に語られることが多い言葉ですが、
 実はこれ、奇跡や臨死体験などではなく、自然現象の見せる幻影なのです。
 遭難者が見ているのは、実は霧に映った自分の影だったのです。

 この場合、背後から射す太陽の光が、
 前方にある霧にぶつかって広がり、虹色の光の輪ができます。
 その中に自分の影が投影され、まるで光り輝く神の姿が現れたように見えるわけです。
 ドイツのブロッケン山でよく見られたので、その名がついたそうです。
 もっとも、ドイツの人の目にはそれが神ではなくモノノケのように写ったようで
 ”ブロッケンの妖怪”と呼ばれています。


 私が空の上で見たものは、光輪(こうりん)とよばれるもので、
 ブロッケン現象が雲の上で起こったものだったのです。
 太陽の光が雲や霧に反射してできた虹の中に、
 間に入った飛行機の影が映っていたわけです。
 簡単な図にすると、こんなかんじです。

 
   
    
     晴れ               ブ     
     太   →    飛     ロ 光   ←   雲
     陽   →    行     ッ      ←   や
     の   →    機     ケ 輪   ←   霧
     光               ン                   ※矢印は光の方向


 けれど山での遭難で一番怖いのは、
 方向を見失って同じ所をぐるぐる回って道に迷うことだといいます。

 ブロッケン現象の場合、光を背に受けて幻影ができるわけですし、
 山で見るブロッケン現象は、山頂からふもとに向かってできることが多いそうですから、
 それを追って行けば一定の方向に進むことができるので、
 結果、生還することにつながるのではないでしょうか。
 たとえイリュージョンであったにせよ、
 遭難者にとってその幻は、救いの神だったということになります。

 もし私が山で遭難して、神や仏に出会ったら、迷わずついて行くことにいたしましょう。
 ただし、崖から落ちないように気をつけながら・・・・。


  飛行機の光輪を見る方法
 ○ 時=太陽光が斜めに射す時間帯(夜はもちろん、真昼も×)
 ○ 場所=進行方向に対し、太陽と反対側の窓際の座席で、翼やエンジンのない所
 ○ 気象=雲がある程度近くにあり、なおかつ太陽の光が射している
 ※以上の条件を満たしていれば、斜め下にかなりの確率で見ることができると思います。
   あとはひたすら目をこらして、窓に張りついていることです。ピース



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Posted by tamisan at 15:53│Comments(0)目撃
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