2011年11月18日

虹の身体


 チベットには、古より伝わる”ゾクチェン”という摩訶不思議な修行があるそうな。
 それをマスターすると、『虹の身体』を得ることができると言われています。
 虹の身体・・・、何とマジカルな響きをもった言葉でしょう。
 今日は、その虹の身体にまつわるお話を書いてみたいと思います。

 

 1939年生まれのチベットの転生活仏、ナポリ大学名誉教授でもある、ナムカイ・ノルブの著
 「ゾクチェンの教え」の中に、彼の叔父トクテンの目撃談が紹介されています。

 1952年、叔父の知っているある老人が、自分はこれから一週間以内に死ぬから、
 七日間自分をテントに閉じ込めておいてくれ、と近親者に告げました。

 これはある意味、爆弾発言です。
 チベット人の常識では、これは老人が
 「私は、これから虹の身体を成就してお目にかけます。どうか皆さん、ご照覧あれ。」、
 と世間に堂々と宣言したようなものなのです。

 叔父をはじめ、周囲の人間は、その老人がそんなことのできるすごい行者だったとは
 夢にも思ってみなかったものですから、みんなビックリ仰天。

 八日目になると、大勢の人々がそれを見るため集まって来ました。
 中国の役人も、今度こそ、チベット人の迷信を暴いてみせようと、
 手ぐすね引いて待ち構えておりました。


 ・・・・いよいよテントが開けられたとき、
 そこにあったのは、老人の髪と爪と着ていた衣服だけでした・・・・。
 老人は、みごと虚空にかき消えたのです。

 これはどういうことかと言いますと、ナムカイ・ノルブはこう書いています。

 『肉体的な死を経過することなしに、身体がふつうの生き物の目から見えなくなり、
 さまざまな元素の光輝くエッセンスに変容し、あるいは吸収される。』


 わかりやすく言いますと、瞑想によって肉体細胞のバイブレーションを上げることにより、
 生きたまま透明な身体に変容してしまう、ということではないかと思います。
  (何ともはや、スゴイことができるものですね。)

 彼の存在は消えてしまったわけではなく、修行を積んだ特別な人間には見えることもあり、
 コミニュケーションもとれるようです。
 おそらくこのとき老人の姿は、七色に光り輝く虹の身体となって見えているのでしょう。
 でも一般の凡人にとっては、彼が透明人間になってしまったとしか思われません。
 テントの周りで驚愕する人々を尻目に、かの老人は呵呵大笑していたに違いありません。

 遠い昔のお話ならともかく、この現代において、
 しかも修行を積んだラマ僧でもない石工の無名の老人が、人知れず悟りを開き、
 ある日突然こんなことをやらかすのですから、チベット仏教恐るべしです。

 (ちなみに、老人が虹の身体を成就したとき、自分は何年も彼を知っていたのに、
 全く気付けなかったと嘆いたノルブの叔父も、近年虹の身体の悟りを開いたそうです。)


 けれど、こういうチベット仏教の精華が世界に知れ渡るようになったのが、
 中国のチベット侵攻により、難民となって世界に散って行った、
 ラマ僧たちによってであることは、歴史の皮肉といえるでしょう。

 一日も早く、チベットの人々が祖国を取り戻し、平和に暮らせるよう祈ります。


★「ゾクチェンの教え」  ナムカイ・ノルブ  地湧社



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Posted by tamisan at 08:16│Comments(0)BOOK
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